ストレスは肌に悪い
疲れていたり、いやな気持になると、肌の調子が悪くなることがあります。かゆくなったり、吹き出ものが出来たり、じんましんが出たりします。
あなたは以下の3つのいずれかにあてはまりますか?もし当てはまるなら、ストレスで皮膚が弱くなった経験があるはずです。
・皮膚が弱い
・アトピー持ち
・アレルギー持ち
筆者自身、皮膚が弱く、アレルギー持ちです。例えば私は、金属アレルギー(ニッケルアレルギー)で、ベルトバックルで肌荒れしたりします。典型的なお肌よわよわ体質の私は、疲れや不満で精神的ストレスを抱えていると、肌の調子も悪くなります。
これまで、ストレスがお肌に悪影響を与えていることは経験で理解されていました。しかし、その仕組みは科学的には解明されていませんでした。
悪化させる仕組みがついに解明
順天堂大学の先生たちが、精神的ストレスと皮膚アレルギーの関係をついに解明した、と12月に同大学が発表しました。
まず、その仕組みをひとことで説明します。ストレスを受けると体内の炎症を抑える機能が低下する。言ってしまえばそういうことです。
次に、もう少し詳しく説明します。
ストレスを感じると、交感神経が反応して、ストレスホルモンを分泌します。
交感神経とは、危機や危険が生じたときに体の反応を引き起こす、自律神経のひとつです。例えば、緊張した時の心拍数増加は、交感神経が引き起こしています。
ストレスホルモンとは、ストレスを感じた時に分泌されるホルモンです。身体に必要不可欠なものですが、ストレスが多すぎるとこのホルモンが過剰に分泌されて、健康に悪影響を与えます。
このストレスホルモンを、マクロファージが受け取ります。
マクロファージとは白血球のひとつで、免疫の役割を持ちます。
ストレスホルモンに晒されたマクロファージは、本来持つ炎症を抑える機能が低下してしまいます。
この炎症を抑える機能とは、死んだ細胞を除去する働きのことです。炎症を抑える機能が弱まると、炎症のある部分で、死んだ細胞が除去されずに蓄積されてしまいます。
蓄積された死んだ細胞は、DAMPと呼ばれる物質を放出します。DAMPは凄く難しいので簡単に説明すると、炎症反応を継続させる機能を持つものです。
その結果、炎症が悪化してしまいます。
なぜ炎症反応が必要なのか
そもそもアレルギーの時、体内では炎症を起こす反応と、抑える反応が同時に起こっています。
なぜ炎症を起こす反応が起きるか、を簡単に説明します。「ここで炎症が起きているよ」とメッセージを発することで、免疫細胞の働きを促進するためです。
炎症が起きている間は、それに対処するため、免疫細胞に働いてもらう必要があります。そのため、事態が解決するまでは、炎症を起こす反応と抑える反応が同時に起きています。
今回の実験のように、炎症を抑える機能が弱くなってしまうと、炎症を起こす反応が相対的に強くなり、両者のバランスが崩れてしまいます。
そのため、炎症が強くなってしまうわけです。
ストレスは本当にお肌に悪い
今回、ストレスがお肌の炎症へ悪影響であることも、科学的に明らかとなりました。
この実験では、ストレス負荷を与えたマウス(マウスA)と、ストレス負荷の無いマウス(マウスB)が用いられました。そして、どちらのマウスにも皮膚アレルギーを発生させました。
すると、マウスAの方が、皮膚が腫れていて、アレルギーに関する細胞の数が増えていることが分かりました。
治療法が産まれる可能性も!
ストレスが免疫細胞の性質を変えてしまうカニズムが解明されたため、その治療法が見つかる可能性も出てきました。
今回実験に使用したマウスへaspase-1阻害剤を投与すると、ストレスで悪化した炎症が収まったのです。
aspase-1とは炎症を引き起こす酵素のひとつ。aspase-1阻害剤は、aspase-1の働きを邪魔するものです。
ストレスを溜めないようにしよう
今回の実験で、過剰なストレスは体内の免疫細胞の働きを変えてしまうことが分かりました。
身体の中では、基本的に様々な細胞や働きが釣り合っています。しかしストレスが大きすぎると、そのバランスが崩れてしまい、異常が発生します。
ちょっとのストレスなら、身体が上手く対処してくれます。全くストレスの無い生活なんてあり得ません。
でも、ストレス耐性には個人差があります。日々自分の体と向き合って、理解することが一番大切です。