はじめに
EUはニッケルアレルギーを引き起こす可能性のある製品に対して、被害を抑制するため規制を設けています。
本記事でそのニッケル製品規制について詳しく見ていきます。ニッケル検出試験のEN1811についても解説します。
主に参考にした資料はNickel Directive (Wikipedia)やニッケルアレルギー性接触皮膚炎(ニッケル協会)、その他資料はこちらのページでまとめています。
補足ですが、日本では同様の規制は無く、比較するとEUのニッケルアレルギー対策は厳しいと言えるでしょう。
EUのNickel Directiveとは
Nickel Directiveとは、EU加盟国に対して、アクセサリーをはじめとする肌に接触する機会の多い製品へのニッケル使用の制限を求める指令です。
ちなみにEUにおける指令とは、目的を達成するため、加盟国へ法の整備などを求めるものです。
つまり、どのEU加盟国でもニッケルアレルギー対策の規制が行われているということです。
1994年に作成され、2009年にはREACHという別の規制に統合、現在もニッケル利用は規制され続けています。
ニッケルアレルギーが問題視された理由
ニッケルアレルギーは接触性皮膚炎の主要な原因のひとつ。西ヨーロッパと北アメリカにおいては、人口のおよそ10%がニッケルに対してアレルギーを持つほどです。
ニッケルアレルギーはピアスなどの、長時間着用する装飾品をきっかけとすることが多いです。
そして、一度アレルギーを起こすと、ニッケルを含む他製品と接触期間が短くてもアレルギーを起こすことがあります。
元々、1ユーロコインや2ユーロコイン、カナダの5セントコインなど、ニッケルを含むコインとの短時間接触は問題ないと考えられていました。
しかし、ニッケルアレルギーを経験したことのある人にとっては、短時間の接触でもアレルギー性皮膚炎の原因となる、と分かったのです。
通貨に触れるだけで皮膚炎が起きるなんて、ひどすぎますよね。
そこで、ニッケルアレルギーの発生を防ぐため、まずはニッケルアレルギーを引き起こす原因となりやすい装飾品について、ニッケルの利用を規制することになったのです。
1度目のニッケルアレルギー(長時間接触による)を防げば、ニッケルを含むコインとの短時間接触によるアレルギーは起こらない、と考えたわけです。
1994年のことでした。
ニッケル規制の内容
Nickel Directiveは、肌に長時間触れることの多い製品について、それらのニッケル放出量に制限を定めました。
この制限を満たしていない製品は市場から排除されることになったのです。
主な制限は以下の2つです。
- ピアスなど身体を貫通する製品は、ニッケル溶出量が0.2㎍/㎠/week (週に1平方センチメート当たり0.2マイクログラム)を超えてはいけない
- 肌に直接触れたり、長期間触れる製品は、0.5㎍/㎠/week (週に1平方センチメート当たり0.4マイクログラム)
ざっくりと説明すると、製品からにじみ出て体に触れるニッケルの量にルールを設けたわけです。
このニッケル溶出量を測る試験がEN1811です。
EN1811
EN1811は、製品のニッケル溶出量を計測する試験です。
ざっくりと説明すると、対象物を人工の汗に1週間晒して、ニッケル溶出量を測ります。
日本ではニッケルアレルギー対策の規制はありませんが、複数の試験期間でEN1811実施依頼を引き受けています。
現在、ニッケルアレルギ―対策の規制は?
上述の通り、EUにおいてNickel DirectiveはREACHという別の規制に取り込まれ、現在もニッケルアレルギー対策の規制は存在しています。
EN1811試験についても、より正確で優れた試験がないか検討されていて、EN12471やEN12472などの試験が存在するようです。
ちなみに、記事執筆時点では、日本ではニッケルアレルギー対策の規制は存在していません。
本記事の総括
以上、本記事ではEUにおけるニッケルアレルギー対策のための規制と、EN1811試験について解説しました。
私自身もニッケルアレルギー持ちですが、日本も同様の規制を設けるべきだ、とは思っていません。
製品選びに注意すれば問題なく生活できるでしょう。
アクセサリーの他、身に着ける金属類は出来るだけニッケルフリーのものを選びましょう!